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2016年12月24日 (土)

遺骨の定義、散骨ー「改葬」を論じる前に

「改葬」とは「墓地、埋葬等に関する法律」(「墓地埋葬法」。かつて「墓埋法」と略すのが一般的であったが、近年変化が見られる)第2条3項に次のように定義されている。

この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。

ちなみに「埋葬した死体」とは「土葬された死体」(年月が経過すれば骨化して「遺骨」になっているだろうが、墓地の墳墓(一般にこれを「お墓」と言う)に入れた状態を言う)のこと。
「埋蔵した焼骨」とは火葬後の遺骨(=焼骨)を墓地の墳墓に入れた状態のこと。
「収蔵した焼骨」とは火葬後の遺骨(=焼骨)を納骨堂に入れた状態のこと。

一般にお墓に遺骨を入れることを「埋葬」と言うが、これはあくまで一般的表現で、墓地埋葬法では「埋葬」と言えば「土葬」以外の意味はない。
ちなみに、ここで「遺骨」と書いたが墓地埋葬法では火葬後の骨は「焼骨」と表現される。

「改葬」を論じる前に言葉の整理をしておこう。

「遺骨」という表現は刑法190,191条に出てくる。

第189条  墳墓を発掘した者は、2年以下の懲役に処する。

第190条  死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。

第191条  第189条の罪を犯して、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

刑法190条は内容的に次のものを含む。
死体損壊罪、死体遺棄罪、死体領得罪
遺骨損壊罪、遺骨遺棄罪、遺骨領得罪
遺髪等損壊罪、遺髪等遺棄罪、遺髪等領得罪
※「遺髪等」とは「遺髪又は棺に納めてある物」を言う。

墓地埋葬法の「焼骨」は「火葬された人骨」であるが、刑法の「遺骨」の定義は特にない。
墳墓に埋葬(土葬)された死体の骨化したものは189~191条の文脈で明らかに「遺骨」である。
では「焼骨」はすべて遺骨か、というと簡単ではない。
日本では大きく西日本は部分拾骨、東日本は全部拾骨と骨上げ(拾骨)の慣習が異なる。
焼骨がすべて遺骨であるとすると西日本の拾骨慣習は遺骨遺棄になってしまう。
従って「焼骨のうち拾骨されたものが遺骨」と解すべきであろう。

刑法190条との関係で問題となったのが
散骨(自然葬)が「遺骨遺棄罪」との関係で
エンバーミング(遺体衛生保全)が「死体損壊罪」との関係で
である。

刑法は法務省の管轄であるが、法務省では朝日新聞が散骨について見解公表したと報じたが、見解が公表された事実はない。
朝日新聞の当時の記者のミスリードである。
http://romagray.cocolog-nifty.com/himonya/2016/12/post-8690.html

墓地埋葬法は厚労省の管轄である。
散骨について厚労省のホームページに記載があるのは「全国厚生関係部局長会議資料(生活衛生局)説明事項」
http://www1.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seikatu1.html
にある「これからの墓地等の在り方を考える懇談会の開催について」だけである。
これは厚生省生活衛生局時代の生活衛生局長私的懇談会(これはよくわからない会合だった)で、その結論ではなく、懇談会の開催主旨が書かれている。
・ 墓地、埋葬等に関する法律が制定されてから50年になろうとしているが、その間に、首都圏への人口集中により周辺地域の墓地の不足や高価格化が進む一方、核家族化の 進展に伴う無縁墳墓の増加、葬送等に対する国民の意識の多様化などが見られ、墓地、埋葬等をめぐる状況は大きく変化してきている。
・ このような状況を踏まえ、時代の変化に対応した墓地等の在り方について広く有識者 の意見を伺うため、本年2月から、生活衛生局長の私的懇談会として、「これからの墓 地等の在り方を考える懇談会」を開催する予定である。
・ 検討事項として、墓地等の需要とその計画的供給の在り方、墓地等の経営の在り方、墓地等の管理者の養成の在り方、墓地等の有期限使用契約の導入など契約の標準化、無 縁墳墓の改葬手続きの見直し、散骨等新たな葬送方法への対応などを予定している。

この私的懇談会の結果生まれたのが「無縁墳墓の改葬の簡略化」であり、墓地埋葬法の施行規則第3条に記載がある。今は
「死亡者の縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し一年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札に一年間掲示して、公告し、その期間中にその申出がなかつた旨を記載した書面 」で済むようになった。http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23F03601000024.html

散骨についてはその後特に定めがない。
厚労省の見解では墓地埋葬法制定当時には散骨という葬法が想定されていなかったのでいい悪いが言えない。対象外。
懇談会では一定の方向性を出すべきという意見があったがその後は対処がされていない。
今は墓地等の許可権限が都道府県から市ならびに特別区(町村は都道府県知事のまま)に権限が移行したので、各地方自治体の考え次第となる。

規制で有名なのは北海道長沼町で、「長沼町さわやか環境づくり条例 」
第11条 何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。
と散骨を禁止している。
その他、規制をしている地方自治体がある。
http://www.352-mag.com/law.html

刑法190条との関連で論じるならば
刑法190条は「国民の死体(法律的には「生体」との関係で「死体」であり、われわれが慣用的に「遺体」と言うのは、死体を尊厳あるもの、と理解した表現)や遺骨等に対して社会的風俗としての宗教感情を守る」
ことを目的とした法律である。
つまり「遺体、遺骨等を大切にしようという気持ち」を保護することを目的としている。

したがって、遺体や遺骨等を損壊、遺棄、領得してその国民感情を害する目的ではなく、葬送等を大切にしようという目的から相当の節度をもって行われるのであれば違法とは言えないだろう。
目的と方法の適正さが問題となる。
他人の感情、風評被害を無視した散骨は適切でない。
遺体の公衆衛生や尊厳を冒す技術的不備をもったエンバーミングも適切でない。

散骨についてはルールの合意は明確なものはないが、「遺骨処分」を目的としたものは適切ではないだろう。
また、散骨を実施する場所も、生活用水で用いられている河川、養殖場や海水浴場等の付近や他人の農地や住宅地の付近も避ける配慮がほしい。
撒く場合、遺骨の原型が残らないまで細かく砕くことも必須の条件となろう。
目的と相当の節度は厳密に考えられていい。

各種調査で「自分は散骨してほしい」という意見は3割未満であるが、「本人が希望するなら散骨していい」とする意見は約7割以上、と肯定的に受け取られている。

だから希望する人の気持ちも尊重して、それが悪感情で妨害されないためにも実施は適切さが求められる。

散骨についての法規制も一部の自治体以外にはなく、裁判所の判例もない。

エンバーミングについては既に判例がある。
IFSA(一般社団法人日本遺体衛生保全協会)の自主基準を守って行われる、という条件付きで「正当業務」と認定されている。
このIFSAの自主基準、そんじょそこらの法律よりも細かく規定している。
http://www.embalming.jp/
(エンバーミングについては別に論じる)

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