« 2018年5月 | トップページ

2018年6月に作成された記事

2018年6月14日 (木)

藤井正雄先生のこと

宗教学者、大正大学名誉教授である藤井正雄先生(1934年生まれ)が69日にお亡くなりになった。83歳。

浄土宗僧侶(お父上は浄土宗門主、知恩院85世、増上寺84世の藤井實應師)。
仏教と民俗の関係についての研究の第一人者である。
「仏教の民俗化、民俗の仏教化」は名言。
1990
年以降は生命倫理に強い関心をもたれ、京大再生医学研究所倫理委員会委員、日本生命倫理学会会長も歴任された。
若い頃、当時気鋭だった学者仲間には奈良康明、佐々木宏幹、山折哲雄、伊藤唯真氏らがいる。

私の関心から言えば、先生は葬送と仏教の関係について、最初にトータルに教授してくださった方。
雑誌の顧問として多くの学者、宗教者をご紹介くださり、座談会への参加、連載のご執筆…と、四半世紀にわたりご指導、ご協力いただいた。

Epson130_2


Epson131
雑誌『SOGI』創刊号(1991.1)に誌上特別講義を行ってくださったうちの冒頭の2ページ。
この時に私が取材し、記事をまとめたのを評価していただいて以降四半世紀以上お付き合いいただいた。


雑誌の編集には多くの方からご協力をいただいたが、その筆頭は藤井先生であった。

私が何がしか葬送と仏教について語れるのは藤井先生あってのこと。
ご自宅にもおうかがいしたし、先生が用事の途中で事務所に来られたことも多い。

主著は博士論文『祖先祭祀の儀礼構造と民俗』


1990
年の対談集『葬儀を考える』はとかく葬儀に対して理論的に斜に構えていた仏教界に、葬儀というテーマを提起した画期的な本である。
藤井正雄先生と伊藤唯真先生(当時:仏教大学教授、現:浄土宗門主)が1997年に編まれた『葬祭仏教 その歴史と現代的課題』は、浄土宗の立場からであったが、教義仏教と生活仏教に分立並行していた仏教界に寺という基盤に立って日本仏教を見直すことを促す最初期のものであった。

貴重な辞典・事典も編集された。

『仏教儀礼辞典』『葬儀大事典』

遺骨、墓についても広く説明、問題提起した

『骨のフォークロワ』『お墓のすべてがわかる本』
は今読んでもおもしろい。
晩年も新しい動きには関心をもたれ、散骨、永代供養墓、樹木葬については直接お会いし、電話などでずいぶんと意見交換したものだ。

啓蒙書も多く出されているが
『仏事の基礎知識』は出色である。

訃報が入り、奥様とお話をさせていただいたが、5年前より病み、昨年秋以降は、自宅での看護が困難となり入院され、最期は心臓が弱くなられたとのこと。

通夜は61718時から
ご葬儀は61813時から
いずれも増上寺光摂殿講堂にて行われる。
供花等は下記にお問い合わせください。

㈱牧野総本店 電話03-3445-0506 FAX 03-3445-0508

以上、藤井正雄先生に心からなる感謝を表し、報告させていただきます。

 

2018年6月 7日 (木)

超高齢社会 「死」の観念、大きく変化-中外日報コラム②

「孤独死」「無縁墓」は再考を―中外日報コラム①

http://romagray.cocolog-nifty.com/himonya/2018/06/post-5ece.html#_ga=2.10109173.1943673036.1528352822-775014334.1512971023

 

超高齢社会 「死」の観念、大きく変化―中外日報コラム②

「平成29年版高齢社会白書」によれば、2016年の日本の総人口1億2693万人に対し、65歳以上人口は3459万人となり、高齢化率は27・3%。
指標では21%以上は「超高齢社会」であり、日本では10年にすでに突入している。

 

問題は「現役世代」(15歳~64歳)の比率の低下である。
戦後高度経済成長期の初期である55年には1人の高齢者を11・2人で支えていたのが、15年には2・3人で支えるまでになった。

これでは年金その他社会保障が財政的にもたないと今「高齢者」の定義を70歳さらには75歳に引き上げる検討が開始されている。

 

「後期高齢者」の75歳以上人口は1691万人、総人口の13・3%だが、日本の将来推計人口(平成29年推計)」では、35年には2151万人、総人口の18・7%と推計されている。

 

「平成28年簡易生命表」によれば、生命表上で出生者のうちちょうど半数が生存すると期待される年数である「寿命中位数」は、1955年に男70年、女74年であったのが、2016年には男84年、女90年と著しく伸長し、「人生90年」時代に突入。

 といっても、すべてが長生きするわけではないのはもちろんのことだ。

 

「平均余命」は、55年には65歳時、男性12年、女14年だったのが、16年には男20年、女24年となった。
つまり、男性77歳、女性79歳だったのが、男性85歳、女性89歳に伸びたのである。

 

死の個人化と超高齢化により、「死」という観念が大きく変化している。

 

20年前頃から葬儀で「長寿をまっとうした」という言葉を耳にしなくなった。

かつては80歳以上で亡くなると「長寿」と言った。

昭和前期である1930年当時は、80歳以上で死亡した者の全死亡に対する割合は5%程度。

したがって80歳以上で亡くなる人は珍しく、その人たちの葬儀は、長寿にあやかろうとする人々が集まり、寿ぎ、祝うかのようだったという。

 

だが今は80歳以上での死亡者数の割合は6割を超え、あたりまえのもの。

90、100と長寿化するに従い、葬儀の会葬者は減る。

葬儀で悲しむ者がいないわけではないが少数化し、淡々と営まれる傾向にある。

ある僧侶は「今の葬儀では、遺族も、会葬者も、そして僧侶も緊張感に欠ける傾向にある」と語る。

 

超高齢化に反比例して、どうも「長生き」願望が低下しているように思える。

4060代の人たちと話すと、本音として「70代までの死」が願望されるようになっているように思えるのだ。

それは80を超すと認知症リスクが急激に高まる等、要介護期間が長期化している等の現実を目撃しているからだ。

【以下、追加】


80
代以上の人間にしても、死は選べないのだから、好き好んで長生きしているわけではない。

 

自分が70の大台を超えて思うのは、かねてから社会通念としてある「死が怖い」という実感がないのだ。

仲間は、少ないものの早いので10代、20代で死に、30代の後半からがんで死亡する者が増加してきた。

40代、がんで死亡した者は「なんでオレが死ななきゃならないのだ!」と最期まで怒り狂っていた。
60
代ですでにバスケットボールの仲間5人中3人が欠けた。

この世に残された者としては、いずれ自分が死ぬのはごく自明のこと、という想いだ。


「死が怖い、はあたりまえ」と言われるが、それ自体が、死に晒されて生きていた前時代までの産物かもしれない。

もとより年齢に無関係に死はいつでも介入する、という事実に変わりはないし、私はそれをいやというほど経験を強いられてきた。

2018年6月 2日 (土)

「孤独死」「無縁墓」は再考を―中外日報コラム①

 

仏教関係の新聞『中外日報』2018420日から518日まで4回にわたってコラムを掲載した。

これについては後で紹介するつもりであったが、予想よりも早く中外日報ホームページに1回目が掲載された。

「孤独死」「無縁墓」 価値観伴った不当な言葉

 www.chugainippoh.co.jp/rensai/zuisou-zuihitu/20180420.html

 

そこで慌てていったんアップしたが、少し注を入れよう、ということで再アップする。
以下が原文に注を加えたもの。


東京都監察医務院「世帯分類別異状死統計調査」によると、東京23区内で自宅死亡した単身世帯のうち死後2日目以降に発見された者は、2004年が2148人、08年2630人、12年が3257人、16年には3657人と増加している。

 

(注)死後2日目以降を再集計して得られた数。上記調査では当日発見された場合も含めて出している。

 

 

ここから推計するに、全国で死亡時に看取る人がいなかった「ひとり死」は年間約3万人となるだろう。

 

(注)「ひとり死」は小谷みどりさん命名。私は「単独死」と称していたが…

 

監察医務院は「孤独死」といい、人によっては「孤立死」というが、これは価値観をともなった用語で不当である。

 

「国民生活基礎調査」によるならば、16年は単独世帯が27%を占めた。若者から高齢者まで4人に1人以上が「ひとり暮らし」。

「ひとり暮らし」をよぎなくされる者もいれば選択する者もいる。「ひとり暮らし」の実態はさまざまである。

 

知人は「ひとり暮らし」の兄を毎月2回訪問していたが、その合間に兄は突然死。妹である知人は「孤独死」という言葉に深く傷ついた。

 

いずれにしろ生前を知らずして、結果として死亡時に看取る者がいなかった人を、死亡後に第三者が安易に「孤独死」「孤立死」と呼んでいいわけはない。

私は価値観なしの用語「単独死」「ひとり死」を用いる。

 

そう言えば「無縁墓」もいやな言葉である。

 

誰とて縁のない人はいない。
たまたま子がいなく墓の跡を継ぐ血縁者がいない、というだけのことである。

 

(注)墓地埋葬法施行規則第3条に「死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂(以下「無縁墳墓等」という。)  

とある。
法令上の文言であるが、だからといって「いい」とする訳にはいかない。

 

 

16年の合計特殊出生率は1.44人、少子化傾向は続く。
生涯未婚率(50歳時の未婚率)は男性23%、女性14%(15年)と非婚化は進む。

離婚数は婚姻数の約3分の1。


結婚する、一生添い遂げる、子どもがいる、家族が一緒に住む、病者を看護する、高齢者や障がい者を介護する―のがあたりまえとは言えない時代となった。
「ひとり」という生き方をすべてが選択したわけではないが実態は多様で個別の事情はさまざまで異なる。


寺はすべての人と縁を結ぶ存在だろう。
それであるならば、せめて寺から「孤独死」「無縁墓」という言葉を追放したいものだが…。

 

« 2018年5月 | トップページ

フォト
2018年6月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ

仲間

ウェブページ