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2018年7月18日 (水)

病院等における「死後のケア」の実態について②

 

病院等における「死後のケア」の実態について①

 

http://romagray.cocolog-nifty.com/himonya/2018/07/1-f03a.html

 

の続き

 

病院等における「死後のケア」の実態について②

 

(5)死後のケア(死後の処置)の概容

 

死後の処置の一般的な内容は、小林祐子によると以下の通り。

 

今日の臨終直後のケアは、一般的に以下の ように実施されている。医師の死亡確認後、家族だけで別れの時間を過ごした後、臨終後 の身体の整容になる。この時、風習や習俗の 尊重に配慮する必要がある。例えば「死水」 または「末期の水」では、家族が唇を水で浸す習慣がある。仏教的には釈迦が入滅のとき、 口渇を訴えたという故事に基づくが、地方の 習俗では、悪しきものから守る、魂を呼び止めるという意味があるとされている。
通常の病死の場合、死後硬直の出現は、一般的に1~2時間で始まることから、出現前に身体の 整容を終わることが重要になる。筋肉の弛緩している時期は、比較的ケアが行いやすいと されていることから、家族との別れを済ませてから速やかに実施している。処置に際しては、体内の排泄物・貯留物を除去し、創傷の処置を行う。また、体内の貯留物が排泄されないように、体腔に弾綿を詰める。全身の清拭后、外観を整えるため死化粧を施す。
(「死後のケア再考」新潟青陵大学紀要第520053月)

 

(6)看護職員による死後のケアの実質の差

 

平野裕子は
「死後の処置は諸外国では死体業者、葬儀社、役所などが実施しているが日本においては病院死の増加に伴い、看護師が療養上の世話の延長として実施することが多い」
としながら、
「しかし、看護師は現行の医療体制における入院期間の短縮化や治療の効率化により、煩雑化する医療業務に追われ、死の瞬間まで生存者であり続けたいと願い、心的葛藤を繰り返すがん患者やその家族に十分に寄り添う看護を提供しているとは言い難い」
と実情の困難さを指摘している。


「包括的ケアの観点から遺族ケアニーズが高まるなか、死後の処置に関する教育は、先輩看護師が後輩看護師に伝統的に手技を教え、看護師主導、かつ短時間に施されていた背景があり、今なおエンゼルメイクの手技、手法に主眼が置かれ」ている実情を報告している。


平野が行った調査1は
「死後の処置を教える看護師の死後の支援時の思いと新人看護師に対する支援の実態調査」
で、まさに厚労省『新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】』で「死後のケア」を「演習」とした内容に相応する。
埼玉県内の5病院の「新人看護師に死後の処置を教えたことのある看護師20名(臨床経験平均10年強)に対する面接調査を行った。

その結果、
「現在勤務している病院における死後の処置を含む逝去時の看護手順書の閲覧経験は3名にあり、メイク方法の確認が1名、理由は忘れたが新人看護師時代に1回のみ見たが2名であった。これ以外の者については見た経験の有無を問われてもその記憶があいまいでわからない、また見たことがないと回答していた」
とある。


看護手順書についても箇条書き程度のものから詳細なものまであった。

死後のケアの手順書が規定されていても実効性が乏しく、標準基準はないに等しい。


平野は死後の処置の実態について、
死後の処置は「たいてい2名で実施していた。死後の処置にかける所要時間については20分以内が原則であり、点滴などのルート類の抜去などを含めても3040分以内に終わらせると回答した者が1名いた」
と所要時間を報告している。
(平野裕子:埼玉県立大学保健医療福祉学部講師、「看取りケア充実に向けた死後の処置教育プログラムの開発に関する研究」科学研究費助成事業研究結果報告書、2015

 

(7)「死体現象」に理解が乏しい看護職員

 

「死体現象」については看護師の認識は乏しい。

時間制限の基になる一つの死後硬直については9割方が理解しているが、腐敗、肌色の変化、皮下出血、体温低下、うっ血、浮腫、乾燥等についての理解は半数以下、中には1割程度というのが実態。

看護職が死後の処置をした場合でさえ「死体現象」を知らずに行うのであるから、遺体に対しての処置としては充分でないことは明らかである。


もっとも口腔への脱脂綿詰めについては
「後から体液漏出防止に効果がない」
として後からの葬祭従事者による低温管理に委ねるエンゼルケア専門家もいる。
だが喉奥への詰め物効果は臭い防止にあり、こうした死後時間経過に伴う変化に対応していない者は少なくないどころか一般的である。



(この項続く)

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