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2018年11月12日 (月)

『現代用語の基礎知識2019』が出た

■自転車を買った

一昨日、自転車を買った。
変哲もない普通の自転車だ。

これまで家にあった、これも変哲もない自転車が壊れていた、ということも理由だ。
もう一つは、はるか昔、高校生時代以降乗っていなかった自転車に乗ろう、と思い立ったのが理由だ。

中学時代、国道の坂道を目を瞑って降りる、という危険な遊びをした、という古層に近い経験があるので、易しいものと思っていた。
50
年を超える長い空白時代を経て乗った自転車は、すぐ慣れはしたものの、老いた者にとってはいささか安定性を欠く乗り物だった。

そこで昨日、「練習」と、歩けば2025分先の井荻駅まで走ってみた。
往復わずかな時間、閉じこもることの多い身としては、さわやかな風を感じて走る楽しい時間であった。
自転車にも少し慣れた。
車では「揺れる」など感じることもないが、自転車は初動時に揺れる。
動き出せば「安定」する。

私は、いわば「初心者」なので、交差点、交差点ではいったん休止する(それが交通ルールに則った正しい乗り方なのだ)が、多くの自転車乗りは、ろくに見ないで、休まず走る。
車に乗っている時、自転車はこわい、と思っていたが、ほんとうに「怖い」走り方をする。

いなかの長い一本道と異なり、小路は特に交差点が多い。
自転車であると、漕いではすぐ交差点。
車と異なり、一方通行も無視だから、どこから車や自転車が来るやもしれない。
それなのに、平気で交差点をわたる。
あまり人の通らない小路では、「だいたい安心」という気があるのだろう。
自転車自体が安定性を欠くが、乗り手の意識が危険である。

 

■現代用語の基礎知識


さて先日、『現代用語の基礎知識2019』が送られてきた。
昨日の朝刊に出版広告が出たので報告しておく。
2019
私が「葬送」というページ(現在3ページ)を担当するようになったのは正確な記憶がない。
手元にある原稿データで最も古いのが2006年。
それが最初だとすると12年間書き続けてきたことになる。

もちろん、毎年少しずつ改訂するのだ。
サラから始めるわけではない。
編集部が新聞、雑誌の新語とおぼしき用語関連記事の切り抜きを送ってくれる。
それに私の調べを加え、掲載語を決める。

最初は見開き2ページだった。
読者のことを考え、フォントを大きくするにつれ、掲載語も解説文字数も少なくなった。

担当するにあたり、基本語はできるだけ外さないようにしている。
「新語」を追いかけては理解できないことが多いからだ。
最初に担当するにあたり、担当外のカタカナ語などの間違いも修正してもらったことを記憶している。


2007
年版の記載を抜粋しておく。

いのちがなくなること。古代の日本人は身体から霊魂が遊離してしまうことを死と理解した。現代の人間の死は医師が判定するとされている。医学的な死とは細胞にいたるまでの死ではなく、有機的全体としての個体として生命活動がやんだと判断されることを言う。現在は心臓死脳死2種類による判定がある。心臓死は、①呼吸の停止、②心拍停止、③瞳孔散大・対光反射消失、の3点の不可逆的停止を判断して死亡を判定。「不可逆的」とは元に戻ることがない、という意味で蘇生の可能性がないということ。脳死は、脳の機能が失われたことをもって判定される死。臓器移植カードなどで本人が脳死判定に同意し、家族も同意した場合に行われる。従来は脳死と心臓死の時間的差はあまり問題ではなかったが、医療技術の進歩により人工呼吸器(レシピレータ)が開発され、脳死に至っても心臓は動き血流が身体を回るという現象が生じた。脳死に至ると人工呼吸器をつけても通常で1週間程度、長くても1ヶ月程度で心臓死に至るとされる。2つの死の概念が出て、どれをもって個体の死とするべきか議論がある。

自宅死

自宅での死亡が減少し、病院での死亡が一般的となっている。その推移を見ると、1952年には自宅死は82.5%あったが、73年には50.2%となり、2004年には12.4%にまで減少した。自宅での家族による看取りが少なくなり、生活の場から死が切り離される傾向にある。今後は介護保険による在宅介護、在宅ホスピスの普及により自宅死も見直される可能性もある。

死後の処置

医師による死の判定直後に行われる遺体に対する清浄、傷口などの処置、衛生的処置、着替え、死化粧などを言う。「清拭」とも言われ、現在では病院死が多いことから、看護師など医療関係者の手で行われることが多い。近年では「エンゼルケア」とも言われることがある。在宅死の場合には訪問看護師あるいは葬祭従事者が行う。葬祭従事者が行うものは「納棺」と言われ、遺体に清拭を施し、死装束に着替えさせ、死化粧を施す。「湯灌」とは現代では遺体を浴槽に入れシャワー洗浄するものを言う。

エンバーミング

日本語で「遺体衛生保全」と訳される。遺体を消毒・防腐・化粧・修復する処置。胸部または大腿部の動脈を小切開し、防腐剤を注入し血液を静脈から排出する。腹部も小切開し、ガスや腸の内容物を排出し、防腐剤を注入する。目や頬、傷口を修復する。半永久的保存も可能。2時間程度の簡易処置でも処置後10日間程度は腐敗などの遺体変化が生じない。北米では遺体の9割に処置される。日本では1988年に導入され、現在25ヶ所で実施し、年間14千体。遺体の海外移送にはエンバーミングを義務づける国が多い。2004年から日本でも民間団体であるIFSA(日本遺体衛生保全協会)が技術者エンバーマーの養成、資格制度を開始した。医科大学解剖学教室における献体遺体の保存においてもこの手法は用いられている。

献体

医学部や歯学部の学生の教育のために行われる解剖実習に死後の遺体を供することを無償で行うこと。生前に自分の意思で家族の同意を得て大学に登録しておく。献体遺体に対する解剖を「正常解剖」と言う。解剖実習後は大学の責任で火葬され遺骨は家族に返還されるが、引き取り手のいない遺骨は大学の責任で合祀墓に納められる。

斎場

葬儀をする場所のこと。昔は臨時に設営されたが現在では常設の建物の斎場(葬儀会館)が現れている。2005年現在斎場(葬儀会館)で行われる葬儀は69.4%となっている。葬儀は一般的には自宅で行われることが多かったが、90年代以降に全国各地で葬祭事業者による斎場建設が進み、今や斎場葬が主流となった。2000年以降、病院からの遺体の自宅への搬送・安置が急激に減少した。火葬場のことを「斎場」とも言うが、これは火葬場に式場を併設した以降の戦後の用法。

祭壇

告別式用の装飾壇のこと、昭和の前期に大都市で現れ、60年代に全国で用いられるようになった。仏式で主として使用される上部が宮型、寺院建築風の装飾物は昔の葬列で用いた輿(柩を運ぶ道具)が変形したもの。現在では葬儀式の法要・礼拝のための装置という意味と死者を弔うための表現装置という意味があり、後者の比重が大きくなっている。現在では生花祭壇が隆盛となり、中には祭壇抜きの葬儀もある。葬儀が個性化する中で大きく変容している。

葬儀

葬送儀礼の略。死後の通夜・葬儀・火葬から喪と続く一連の死者を弔い、葬るための儀礼を言う。「葬式」とも言う。葬儀式(死者を送るために行われる主として宗教儀礼)と告別式(死者に別れを告げる社会儀礼)とが並行して行われる葬儀・告別式方式が主流であったが、近年は通夜への会葬者が多くなり、通夜・告別式方式が主流となってきている。東北地方等、葬儀式に先立って火葬を行う骨葬方式もある。

家族葬

家族中心に営まれる葬式のこと。日本のこれまでの葬式は地域共同体や勤務先等のコミュニティ中心で、対社会的に営まれてきた。これに対して近親者だけでの社会に閉じられて営まれる葬式を「密葬」と言った。95年以降、密葬に代わり「家族葬」という用語が登場、2000年以降に全国的に市民権を獲得してきた。家族葬にも幅があり、家族数人だけによるものから、家族・親戚による30人内外のもの、それに友人・知人を加えた5060人前後のものまである。死者本人をよく知る者を中心としたこぢんまりとした葬儀を呼ぶ。葬儀は92年のバブル景気崩壊後、個人化、小型化の傾向を示している。90年頃の会葬者数の平均は280人程度であったが05年には132人まで減少している。



■「この分野を読む」2012年版


011
年の東日本大震災が契機だったろうか、用語解説に加えて「この分野を読む」を毎年新規に書くことになった。
2012
年版(2011年秋刊行)は以下。

 

【この分野を読む】

●死者・行方不明が2万人を超える東日本大震災の特徴は、大津波により瞬時に死と生が分かたれたことである。人命救助活動は翌12日には終了。その後の遺体捜索・収容作業が難航。直後は1万人を超す行方不明者が出た。海上、崩壊建物下、原発事故現場付近さえ捜索が実施されたが、今なお多くの行方不明者が残る。1カ月後以降に発見された遺体は一部白骨化し腐敗が進み、身元確認は採取されたDNAや歯型によって行われている。自衛隊・消防・警察・宗教者・葬祭業者の徹底した死者への敬意、弔いは記憶されていい。また行方不明者に対する死亡届は特例として家族の申述書により提出可能となったが、家族の多くが自らの手による死亡判定に困惑している。

●被災地の火葬場は小規模が多いうえに停電等で機能停止。多くの遺体は遠隔地の火葬場に送られた。火葬が進まないために公衆衛生上保全が困難な遺体は2年を期限に仮埋葬された。だが、火葬が進むと仮埋葬は中止、埋葬された柩も掘り起こされ、再納棺の後に火葬されている。

●自死(自殺)者数年間3万人台が13年連続。各自治体や宗教者が自殺予防に積極的に取り組むが、自死を「いのちを大切にしない」とする見方も依然多い。多くはさまざまな事情で精神疾患を伴う「追い込まれた死」との認識は徹底していない。被災地では有意に自死が増加している。

●孤独死や引き取り手のいない遺体も依然として多い。家族のいない人は「孤族」とも言われる。終末期や葬送面からも家族、親族関係が弱まるにつれ、血縁に依存しない人間関係づくりが課題となっている。

●超高齢社会となり増大する高齢者の医療費を軽減しようと、家族意思による「尊厳ある死」を政府が推進するなど、人の死が経済効率の対象となっている。

 

2019年版「この分野を読む」

新しい『現代用語の基礎知識2019』の「葬送」編の「この分野を読む」は以下。

「人生90年時代」といわれる超高齢化、一般世帯の3分の1を占めるに至った1人世帯の増加、格差社会化等の社会、家族の大きな変化が人生の終末期およびそれに続く葬送の分野にも大きく影響を与えている。

 終末期医療においては、平穏死、自然な死願望が強くなっている。だが在宅医療、介護の需要が高まる一方、地域医療、介護体制の整備は遅れ、家族の介護負担の大きさから、個別事情に応じた病院、施設、在宅という看取りの選択の多様化、自由が主張されている。
 ターミナルケアについては、WHO (世界保健機構)が本人のケアに加えて家族のケアの必要性を説いているが、介護離職の深刻化もあり、家族の事情へのきめ細かい考慮や対策も社会的課題となっている。

 また、増加する単身者への社会的対応は充分ではない。単身者は入院保証人にも苦労し、看取る者がいなくひとり死する者は推定年間3万人、遺体の引き取り手がいないケースは推定年間6万件以上。

 自治体は、引き取り手のいないひとり死が増加し自治体負担費用が増加し財政を圧迫していることから、横須賀市が開始した生前に単身者が死後事務プランを策定、契約しておくエンディングプラン・サポート事業に多くの自治体が注目、追随している。

 葬儀の個人化、多様化は進み、葬儀の小規模化は都市部のみならず地方部でも明確に認められる。葬儀観が多様化、分裂したことに加えて、80歳以上の死者の割合が6割を超えた。死亡年齢が高くなるほど会葬者が少なくなる傾向が明確に認められる。

 他方、2011 年の東日本大震災以降、14年広島土砂災害、16年熊本地震、18年西日本豪雨災害、北海道地震と各地で大小の自然災害が発生、多数の死者、行方不明者を生んだ。人命救助対策が主だった災害対策に遺体対応の重要性がようやく認識されるようになった。

『現代用語の基礎知識2019』本体では「人生100年時代」としているが、私はデータからいってまだ早く、女性の寿命中位数が90歳台に入った段階なので「人生90年時代」としている。
署名原稿であるから、私自身の眼も大切にしている。
ちなみに「終活」は以下。

 

▼終活

高齢化(寿命中位数84.08年、女性90.63)、少子化、家族分散を背景に、自身の終末期(医療、介護)、死後(葬儀、墓、相続等)について、エンディングノートや遺言等で準備すること。2009年に週刊朝日が造語。葬祭業者、司法書士、弁護士等との事前相談、生前契約もある。団塊世代が65歳以上となり4割程度が「関心あり」との調査結果があるが、実際に着手しているのは1割未満。むしろ世話する人間がいないまま要介護、終末期、死に至る《高齢難民》が増加し、社会がどう支えるかが大きな課題になっている。

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